だいは 花が 好きだった 見た目は 漢で 豪快なのに あの子は 「綺麗」が 好きだった 私が 掃除を していると 満足そうに それを 眺めて たまに 化粧を さぼって みると 無言の 圧力 かけてきた 庭に 集まる カモミール あの子は そこに 入って行った 大満足の 笑顔とともに 青い 花を 買ってきたよ 無性に 欲しくて 連れてきたよ 花は とても 小さいけれど 姿勢が ピンと していたの 今年の 庭は 少し にぎやか あの子たちの いた夏を カタチを 変えて つくってみよう あの子たちと 過した 夏を ハルと 一緒に 体感できる 青い色が 濃いハルに 映え 私の こころに 染み込んでくる
金色
随分前の ことだけど 愛しい 姿が 視界に入った 涼しくなびく 金の毛並と 前へ前へと 進む足取り 咄嗟に 私は 走り出し 「待って下さい」と 声かけた リードを 手にする 優しい人は そっと 止まって 待っててくれた なでることを 許してくれて 私と 一緒に 泣いてもくれた 懐かしくって ありがたくって 何度も 何度も 感謝した かなの 空気に ふれられた あの子の においを 吸い込んだ 色や 香りや 澄んだ 気は ほんとに 人を いやしてくれる やさしい 思い出 ありがとう
好機
人間を 生きて いると 様々な “起きてくること”に 向き合わなければ ならなくて 良いこと だって たくさん あるけれど “そうじゃ ないこと”も ときどき 寄って来たりして こころの カップが 空っぽに なってしまうくらい “そうじゃ ないこと”“イヤ なこと” だけどね どんなに “空っぽ”に なったって ちゃんと 泪は 出てくるもので... 不思議だよね これも きっと 生きる 力 泪が こころを 潤して くれて そしたら いつの間にか 顔を上げて いたりして ここで チャンスの 到来なんだ “空っぽ”...に なったときだけ...だ その ときにしか みられない 自分の 器... 入れ物...を しっかりと その手に とって よーく みる 傷が あれば そこを 直す 穴の 部分は ちゃんと 塞ぐ 汚れは みがいて ピカピカに “絶好の 機会が ここに ある” これを 見逃しちゃ いけないよ そんなこと... 思った
ごめんね 神様
神棚を 見上げながら 一心不乱に 尻尾を 振ったり 深夜...だってのに そりゃあ ものすごい 勢いで 玄関...に 向かって 吠え続けたり かなは ときどき 不思議な 子だった そして かなりの 強者だった あの子は たぶん “神様”が とても とても 大好き...で だいが やきもち やいちゃうくらい “神様”のことが 大好きで... そりゃあ “神様”だって そんな かなが 可愛くて 愛しく 思って 下さって まあ あれですか... 「完全無欠の 相思相愛」...って やつですか だけどね 神様... ごめんね 神様 あの子は ときどき こちらに 居ます もちろん だいも 一緒です 心配していたら ホント... ごめん。
花嫁
夢をみた かなを 見送って 49日... ちょうど その頃 だったと 思う お昼寝だ... 夢... かなは 花嫁衣裳に 身に包み 真っ白な 綿帽子を かぶり “太陽の窓”...がある その 階段...を あがってきた ゆっくりと 静かに 一段一段... リビングのある 二階へと 上がってきた 以前...に 一度だけ 人間の姿で 夢に あらわれてくれた あの かなだ たぶん そうだ...そう 思った 夢は ぼんやり だったので... だけど 深くて 濃厚な 白い色 柔らかそうな 厚みのある 花嫁衣裳... その 花嫁衣裳は とても 鮮明で 私の中に はっきりした 映像...で 今でも 存在して くれている 花嫁...は 息を こらして 見つめるしかない 私の前を 通り過ぎ 和室へと 入っていった そして 押入れの中へ... 入って いった これは 夢...か 白昼夢 なのか いつ 自分が 目を 覚ましたのか わからない 心臓が 高なって 息が 速くなって 涙が ポロポロ 出てきた あわてて 起き上がり あの子...の かなの姿を追った 押入れを あけて その戸...を あけて 頭の中では “会えることは ないのだ” そう わかっていても あの子の 名前を 呼びながら その戸の 向こうにある物...を 全部 出した 次から 次から どんどん 出した もしかしたら あの子が “かくれんぼ” しているかも しれないと 思ったから... ねえ かな... おかーさん “かくれんぼ” は 苦手だな ねえ かな... おかーさんは かなのこと みつけることが できなかったよ あのときの かなを みつけることが できたのは みつける ことを 許されたのは たぶん きっと だい だけだったんだろう それだから...の 花嫁衣裳 だったのかも しれない そんな風に 思ったりもする ねえ かな... おかーさんに こっそり おしえてほしい あのとき あなたは お嫁に きたの? 誰よりも 大好きで 誰よりも 一番に 信頼していた “だい”くん...だものね もしかしたら だいが それを 願ったの...か そして かなが その 想い...に こたえてくれたのか... だとしたら かなは おしえて くれないね だって それは あなたたちの “ヒミツ” だものね あなたたち だけの 大切なこと...だものね 夢...は 夢 そして 現実...は ここに在る だけど ときどき その 境界線の “はざま”で 立ち止まって しまいそうに なったり ゆらゆら ゆれて しまったり あのときの あの夢の すぐ後だったよ だいが 体調を くずし始めたのは やわらかな 夢からの ゆらぎ...と 現実に 起きてくる 厳しさ... との 対峙 あれ...は そんな 体感 だった
風
かわいい ハルと 朝の お散歩 ばったり 出会う ”太陽くん” お顔 にっこり しっぽ ピコピコ ステキな 名前 もらったんだね また... 会おうね ”お日様”...くん あの子たちが いてくれた あの”とき”...の 風 その におい 私の目の前 通り 過ぎる... くるっと 回って 包んで くれた
おままごと
ていねいに 料理をつくってみる 別に 特別なものではなくても ゆっくり やさしく つくっていると そこから でてくる すべての 音が 心地 良いことに 気が付いた まな板を 両手の前に置く たった それだけの 作業でも 耳に響く その 音は いつもと 全然 違うんだ はい どうぞ...と まな板が 私を 歓迎してくれる ”ごはん つくらなきゃ”ではなくて ”どんな ごはん つくろっかな”って気分 になってくる 音を 楽しんで 遊んでいたら そのうち 料理が 出来上がる こんな 感じで つくっていると なぜだか 色まで カラフルで 子供のころの ”おままごと” 思い出しちゃうよ いっぱい かわいい ごはんを つくったら うちの おじいちゃん 若返ってくるかもね うん いいかも... これ 楽しみながら 日々 観察してみるか あ... ごめん こんな言い方 ”おじい”...に 失礼 だよね あ... でもさ ほんとに 若返ってきたら すごいよね 水玉模様の かわいい パジャマを プレゼント するよ おお... なんか... さらに 楽しく なって きたぞ 去年から 我が家の 一員 ”うちのおじい”...だ 一人ぼっち...に なっちゃって 不安で たまらなく なっちゃって 来たばっかのときは どよーーーん だったな ...あれから 一年 最近...やっ...と ポヨーーンって 感じで よーし そのうち シャキリーン!...と ”桜 ピンクの おじいに 変身...させてやるわ...て ...なんてね ねぇ だいくん 今日は 外は 雨だけど この 台所...は 快晴...だ ねぇ かなちゃん やっと...だ やっと ここまで これた かなに いっぱい しかってもらって... たくさん たくさん はげまして もらって 一年... かかったよ この子たちに 心からありがとう ねぇ かなちゃん 今日は 少しだけ 泣いても いいよね