あこがれ

あこがれの人
”おばあちゃん”
母方の祖母
綺麗な人だった

特別
美人...という訳では
ないけれど
心底
綺麗な
人だった

朝は早くから
畑仕事
軽く食事をとり
また畑へと...

とにかく
よく働く人だった

肉は食べない
口数は少ない
食事も少な目
寝る前に
ほんの少しの日本酒

なんでも
少な目なのに
逆に
バイタリティの
ある人だった

たまに
仕事を早めに
切り上げ

お風呂に入る

ビシッと
着物に着替えると

私と妹を連れて
写真館に向かう

ああ
なつかしい

祖母と出かける時
本当に
嬉しかった

ぎゅっと
手を繋いで渡る
横断歩道

覚えてる
はっきりと

どんなに
嬉しかったか

”ねえ
 みんなみて
 あたしの
 おばあちゃんなの
 いまね
 てをつないでいるの”

ほんと
嬉しかった

追記

私が眠る時
よく
添い寝を
してくれて

”スサノヲの命”
...の話
聞かせてくれた

背中
...を
さすりながら

日本の神話
語ってくれた

...ね

おばあちゃん

おてもやん

化粧してたら
思い出した

”おてもやん”

ある日
2階の窓から
あの子達の様子を...
お利口にしているかな...と

朝の散歩の後は
お天気のいい時だけ
外のハウスで
午前は過ごす

おうちの中も好きだけど
外は外で
まんざらでもないらしく

通りかかる方たちに
声をかけてもらったり

ご近所さんから
おやつをもらったり...

・・・で
かなは ひっくり返って
芝生で ゴロゴロ

だいくん
相変わらず
姿勢を正して
なかなかの
”漢”な姿

・・・あら?
だいくん
ほっぺが赤い...

・・・あら?
だいくん
まゆげ あったっけ?

----あわてて外に出る
----だいの顔をみる

サインペンのようなもので
お化粧されていた

”まゆげ”と”ほっぺ”だ

しかもだ
まゆげは下向きの”残念なまゆげ”

ほっぺは...
見事な
”おてもやん”が
完成していた

これ
描いたの
誰だろ

どーせなら
キリッとした
上向きのまゆで
お願いしたかった

でさ・・・
だいくん...

いつもの真面目な顔で
だまって
描かれてたの?...

たぶん
そーだよね
...て

こんなこと
思い出した

カリスマ

今年の夏
ち...と
暑かった

暑くなる
少し前のこと
6月くらいだったかな

お散歩から帰ってきて
ふと...
着ているTシャツに
何か付いている

”何?”

よく見ると
少し細長い感じの
小さめの虫だ

点がいっぱい
ついている

数えてみると
十三個ある

なんだこれは
よーくみると

”面長な てんとう虫”って
ところかな

あらら...
はじめてみたわ

Tシャツに そっと指をそえると
すっと乗ってきた

”外に帰さなきゃ”
そう思って
手のひらに誘導する

そのまま玄関から
外に出る

庭の芍薬が
目に入ったので
上の方の葉の上に
コロンと乗せてみた

しばらくじっとしていたが
そのうち
プアっと
空に飛んでいった

家に入って
すぐに調べてみると
”十三星てんとう虫”
...で
間違いなさそうだ

”十三星てんとう虫”
...か
なかなか
ハンサムな
やつだった

今年の夏
暑かった夏

ちゃんと
乗り切ったかな

存在感
あったな

小さな身体に
いっぱいの星
背中にのせて
飛んでいった

君は

カリスマ

約束

あのとき
だいくん 8ケ月くらいだったかな
私
お風呂に入ってて
湯舟につかって
のんびりと...

あれ?
曇りガラス戸の
向う側に
だいのシルエットが...
そして
ピースカ ピースカ
鳴いている

あらら 一体
どうしたの...と
ドアを開けると

いつもの
まじめな顔で
中に入ってきた

だいくん どーしたの?と
しばらく なでなで
していたが...

暑くて
ハアハア言っているので
風呂場から出るように
戸をめいっぱい開けて
外に出るように
促してみた

...だが
...一向に動かない

ハアハア言いながらも
なぜか
満面の笑みだ

あらあら
どうしましょう~って ことで

”おーい。すまんが
 だいを呼んでくれ~
 風呂場から
 出ていかんのだわ”
...と

大声で
息子に呼びかけてみた
するとだ...

”かーさん さっき
 だいに言ってたよね
 「9時になったら
 おかーさんと遊ぼうね」って
 「おかーさんとだいの
 お・や・く・そ・く」って
 言ってたよね
 でさ、今ちょうど
 9時なんだよね...”
...と

我が家の息子くん
ケタケタ笑いながらの
お返事だ

おお そうだった
確かに
私
だいに そう言ったわ
すっかり忘れてた

さすが
何事にも 律儀な
だいくんだ

...でね...
あのね...

だいくん
 時間
  わかるの?...

なぞ...だわ...

苦しくて苦しくて
でも 頑張っていた

逆に懐かしささえ
感じてしまうほどの
あのころ

17年前からの
気が遠くなるような
”長い夜”

あまりの つらさに
たまたま縁あって   
知り会えた
”ある方”

その方に思わず
”私は どうすれば”と
問いかけてしまう

答えは
たしか
”当たって砕けろ”
だったな

その一言だけ だった

”当たって砕けろ”...か

今 やっと
その言葉に
向き合える

ずっと傍に
居てくれた
その言葉

”長い、長い夜が”
明けてくる

そして
この長かった夜に なぜか
感じてしまう
”愛しさと 感謝”

夜は夜なりに
寄り添っていてくれた
”その時間”に

それに
”感謝”

今は
この言葉しか
浮かんでこない

自分を取り戻す

それが
はじまる

栗鼠

”ほら みてよ”
”こんなことだって
 できるんだよ”

神社で
お参りのあと
境内の
緑の中から
姿を現した
一匹のリス

まるで
曲芸ひろう...か

くるくる回ったり
木に登ったかと思うと
ひっくり返り...の

様々な
まるで...

まるで
自分にできることの
すべてを
みせてくれているかの様な

思わず
拍手をしてしまうほど...

”あぁ すごいな”
思わず
声に出してしまうほどの...

その様子に
何人かの人が
集まってくる

”みて下さい
 すごいんですよ”と

何か とても...
とても 誇らしくて

そう
つぶやいてしまう

苦しくて
つらくて
がんじがらめで
身動きがとれない

そんな
何とも言えない感覚と
戦っていたあのころ

”頑張ってみて”
”ほら 君も
 動いてごらんよ”...と

あのときの リスを
なぜか
ふ...と
想い出した

心の中で再び
拍手を送ってみる

”誇りのリス”だな
見事だよ

りんご

"まるく おさまる”
奥が深い

”まるく おさめる”
清濁併せ
のみこんでみる

これも
陰陽か

たとえば 向き合う相手に
”清”だけを 求めすぎると
それ
自分に返ってくる

自分の中の
”濁”の部分に
自分が責められる

泥の中で
咲く花も
あるだろう

”まるく おさめる”

このことに
実は
どれだけ人が
救われているか
...と いう事...

そのこと
少し
考えてみよう

追記

そういえば
20年くらい前に...
ポーンと
放り投げられた”りんご”を
その
”りんご”を
 す...と
受け取った夢

そんな
夢を
みたこと
あったな

あれは
確かに
”りんご”
だった