太陽の窓

カーテンをぬった。

だいとかなが
並んで
よく外を眺めていた
階段を4段上がったところ
小さめの窓。
夕方からは
”律儀におとーさんの帰りを
 ずっと待っている”
だいの
貸し切りの場所だったね。

私も
大好きな窓、
通りかかる人たちに
手を振ったり
通りかかる人たちと
その窓を開けて
いっぱい
おしゃべりをしたり。

この窓
たくさんの人たちの
笑顔をしっている

この窓
何人かの人たちの
悩みをしっている

学校の行き帰り
子供たちの
たくさんの笑顔や
時折みせる
不安そうな表情
私が
今では
すっかり忘れてしまっていることも
きっと
全部覚えているはず。
小さいけど
大きな窓だな。

出来上がったばかりのカーテン。
仕上げに
アイロンをかける時の喜び。
少しドキドキしながら
窓に着けた。

今日は風が強いな。
今着けたばかりなのに
”もう
 ずっと前からお役に立って
 おりますよ”とばかりに
ぴったりだ。

ゆうゆうと
風になびいて
自身満々ではないか。
だいとかなは
このカーテンの中で
かくれんぼだろ
きっと...。

そういえば
きのうの朝
起きがけの
私の耳の中できこえた
”太陽の窓”
という声。
声の主はわからないけど
せっかくだから
この窓にいただこうかな。
”太陽の窓”
幸せな日だ。

だいが泣いた

だいが泣いた
アーモンドのような彼の目から
涙が流れていた
私は犬が泣くのを はじめて見た

息子が高校に入学し、寮生活を始めることとなり
車で2時間ほどの現地まで
送っていく その日、
車内にどんどん詰め込まれていく生活用品や衣類。
私たちのドタバタの動き 息子の様子などから
何となく状況が解るのか...
かなは相変わらず ”兄ちゃん 兄ちゃん”と
甘えっぱなしなのだが
だいは どことなく元気がなく
心なしか
いつも以上に 真面目な顔で...少し緊張気味である。

あっという間の2時間だった。
現地に着き
荷物を寮に運び入れ
その他、色々な手続きを済ませ なんやかんや・・・
じゃあ 私たちは そろそろ帰ろうかと。
息子は だいとかなに
「じゃあまたね。 時々は家に帰るからね」などと
声をかけたり 撫でたりしている。

実は私もかなり寂しい。
まさか、中学卒業で家から離れるとは 想定外だった
少しだけ しんみりしながら
ふ.と だいを見ると...
”だいが泣いている?”...
本当に彼は泣いていた。
車の窓から顔を出して
どこを見ているという訳でもなく
ただ...
つう~
つう~ と
涙を流していた。

”大切な 大好きな人と
これからは 離れてくらすのだ”
という事を
あの子は理解し
寂しくてたまらない心を
ちゃんと表現していたんだね。
”兄ちゃん”に向けた
 深い
  愛情を。

罪悪感

かなが怒った
”お母さん ちゃんと前に進んで下さい”
”逃げちゃだめだよ”
”苦しくたって 進むしかないんだよ”

罪悪感とはこれ程までに苦しいものだったか
人に傷つけられるより
ずっと きついな......

止まってたって、苦しいんだ
後戻りしたって、苦しいんだ
乗り越えられるとしたら
前に進むことだよ
少しずつでも いいから
そうしていたら
進んでいることで
自信がついてくる
強くなってくる
心に
体力がついてくるんだよ
そうすることで
"罪悪感”というものに対して
今までは
ただ
ただ
苦しいだけだったのが
きちんと 向き合い
しっかり 味わって
昇華
することが できるかも
しれない

または
完全に昇華できなくとも
人生の教訓として
側に居ることを
受け入れられるかもしれない

さらにいえば
もしかしたら
ここぞという時に
”頼れる良き友人”
そんな存在になっているかもしれないな。
そうだったら
素敵だな
罪悪感か....
ハードル高いが
頑張ってみるか。

前に進もう
心に
体力をつけよう
それしか
ないな

サンキュー
かな