「おかあさん 私 満足 しているわ」 夢の中で 真正面に すっ...と立つ女性 大人っぽい そして とても 美しい女性 彼女が 私に 話しかけてくる 瞬時に 私は この人が”かな”であることを 理解した 直感...というものを はじめて 強く 体感した 「かな、かな なの? どうしたの?」 私は とっさに 問いかけた 彼女は 再び 繰り返す 「おかあさん 私 満足しています」 私は 少し 不安になって 「何を言っているの...どうしたの! かな!」 私の声が 大きく なってくる 彼女は 美しい口元に 手を そえたかと思うと ”吐血”した... 吐血...して そして そのまま 倒れてしまった 「かな! かな! かな!...」 悲鳴をあげて 泣きじゃくりながら 目...が覚めた ”夢だ 大丈夫だ 問題はない” 頭の中で 様々な 言葉が 通り過ぎてゆく 同時に ぬぐい切れない 不安と恐怖 こみあげてくる 涙...の中で かなの名前を叫びながら あの子をさがす手 驚いて起きてしまった夫が 「どうした? 夢か? かなは ここに 居るよ」 ああ、ほんとだ いつものように夫の横に ちゃんと 居る... 居てくれている... 安堵...と共に また 涙が溢れ出す 私の 大きな声...と 涙...に あの子たち しばらく ぴたりと 寄り添ってくれていた 泣きながら だいとかな を なでながら いつの間にか 眠ってしまった 夢の中の彼女... 美しくて まっすぐに 見つめる瞳もその声も すきとおるように きれいで ”凛”としていたな 柔らかく カールされた 長い髪が 印象的だった そして その夢をみた 半年後... その頃から あの子は 体調をくずし始めた あれ...は そういう 夢...だった 追記 私と夫にとって かなは いくつになっても おさな子 だった かわいい かわいい 三才ぐらいの イメージだった いつもつい赤ちゃん扱いをしてしまっていた あの子が 向こうに旅立ってしまったあと 久しぶりに帰郷した 息子が ふと 「俺は ずいぶん かなに 甘えてた ほんと 甘えさせてもらってたんだよね...」 「俺に とっては お姉さんだったよ」 そう言った あの 大人びた 美しい女性 凛とした姿 かなの本質を 一番わかっていたのは 遠く離れていた 息子だった そして こんな言葉を 送ってくれた 「かーさん かなのこと ずっと 世話をしてくれて ありがとう」 「可愛がってくれて ありがとうね」 まったく... 泣けて... くるよ...