だいは 花が 好きだった 見た目は 漢で 豪快なのに あの子は 「綺麗」が 好きだった 私が 掃除を していると 満足そうに それを 眺めて たまに 化粧を さぼって みると 無言の 圧力 かけてきた 庭に 集まる カモミール あの子は そこに 入って行った 大満足の 笑顔とともに 青い 花を 買ってきたよ 無性に 欲しくて 連れてきたよ 花は とても 小さいけれど 姿勢が ピンと していたの 今年の 庭は 少し にぎやか あの子たちの いた夏を カタチを 変えて つくってみよう あの子たちと 過した 夏を ハルと 一緒に 体感できる 青い色が 濃いハルに 映え 私の こころに 染み込んでくる
好機
人間を 生きて いると 様々な “起きてくること”に 向き合わなければ ならなくて 良いこと だって たくさん あるけれど “そうじゃ ないこと”も ときどき 寄って来たりして こころの カップが 空っぽに なってしまうくらい “そうじゃ ないこと”“イヤ なこと” だけどね どんなに “空っぽ”に なったって ちゃんと 泪は 出てくるもので... 不思議だよね これも きっと 生きる 力 泪が こころを 潤して くれて そしたら いつの間にか 顔を上げて いたりして ここで チャンスの 到来なんだ “空っぽ”...に なったときだけ...だ その ときにしか みられない 自分の 器... 入れ物...を しっかりと その手に とって よーく みる 傷が あれば そこを 直す 穴の 部分は ちゃんと 塞ぐ 汚れは みがいて ピカピカに “絶好の 機会が ここに ある” これを 見逃しちゃ いけないよ そんなこと... 思った
風
かわいい ハルと 朝の お散歩 ばったり 出会う ”太陽くん” お顔 にっこり しっぽ ピコピコ ステキな 名前 もらったんだね また... 会おうね ”お日様”...くん あの子たちが いてくれた あの”とき”...の 風 その におい 私の目の前 通り 過ぎる... くるっと 回って 包んで くれた
おままごと
ていねいに 料理をつくってみる 別に 特別なものではなくても ゆっくり やさしく つくっていると そこから でてくる すべての 音が 心地 良いことに 気が付いた まな板を 両手の前に置く たった それだけの 作業でも 耳に響く その 音は いつもと 全然 違うんだ はい どうぞ...と まな板が 私を 歓迎してくれる ”ごはん つくらなきゃ”ではなくて ”どんな ごはん つくろっかな”って気分 になってくる 音を 楽しんで 遊んでいたら そのうち 料理が 出来上がる こんな 感じで つくっていると なぜだか 色まで カラフルで 子供のころの ”おままごと” 思い出しちゃうよ いっぱい かわいい ごはんを つくったら うちの おじいちゃん 若返ってくるかもね うん いいかも... これ 楽しみながら 日々 観察してみるか あ... ごめん こんな言い方 ”おじい”...に 失礼 だよね あ... でもさ ほんとに 若返ってきたら すごいよね 水玉模様の かわいい パジャマを プレゼント するよ おお... なんか... さらに 楽しく なって きたぞ 去年から 我が家の 一員 ”うちのおじい”...だ 一人ぼっち...に なっちゃって 不安で たまらなく なっちゃって 来たばっかのときは どよーーーん だったな ...あれから 一年 最近...やっ...と ポヨーーンって 感じで よーし そのうち シャキリーン!...と ”桜 ピンクの おじいに 変身...させてやるわ...て ...なんてね ねぇ だいくん 今日は 外は 雨だけど この 台所...は 快晴...だ ねぇ かなちゃん やっと...だ やっと ここまで これた かなに いっぱい しかってもらって... たくさん たくさん はげまして もらって 一年... かかったよ この子たちに 心からありがとう ねぇ かなちゃん 今日は 少しだけ 泣いても いいよね
遠吠え3
追記 「ちがう! ちがう! ちがうでしょ! かな!」 「ちがうでしょ!」 ”あのとき... あの子を 抱きかかえながら とっさに 私の口をついて 出てきた言葉...だ あの子を 困らせて しまうような 一言...一言... だったよね だけどね かな おかーさんは そのことばしか 出てこなかった 天...から 授かっていた ギフトが 流れるような 時に乗って 天...に 帰っていってしまった とても 深く 安らいだ 顔...で 可愛い 可愛い 私たちの娘 暑い 暑い 沖縄で生まれ 寒い 寒い ここ 北海道で 一緒に過ごした 11年間 私たちの 娘でいてくれた 11年間...だ その 宝のような 11年間...に 永遠に消えない その時...に 心からの 感謝を
遠吠え2
"その日”は 朝から じ...んと 肌寒かった ”退院”からの 2日間... その 1分 1秒 が このうえなく 愛おしく 往診で先生にも 診ていただき 状態は少し 安定してきていた 呼吸も ほんの少しだが 楽そうだ ”玄関が いいの” ”ここが いいの” かなが 自分の居場所を 主張する そうだね かな 兄ちゃんが 帰ってきたとき ”いちばん”で お出迎え したいもんね その”場所”に 安心したのか 納得したのか あの子は スースー 眠っている 私とだいも すぐそばで... 少し ウトウト しながら... 時間...て こんなに ゆっくり 流れている ものなんだな... そんなことを ふと 思ったり ”クウ...”かなが 言った 急に かなは 身を 起こして 再び ”クウ...”と息をもらした 私は あわてて あの子を 抱きかかえ... 「お水が ほしいの? かな? 気持ちが 悪いの?...」 ”どうしよう” ”どうしたら いいんだ” 「かな」の名前 呼び続けると あの子は 一瞬 身体を そらせた それから 少し 口を 動かした... ”クウウ...”と 上を向いて... 次の 瞬間 ドスン...と あの子の 身体の 重み...が 倍になって... その重みが 現実を 突きつけてきた 何...が 起きたか...を 私に知らせてきた あの子が 逝った その 瞬間を... その時 そこに 夫は 居なかった あの子の 安定していた ほんの少しの時間 用事を すませる為に 外に 出ていた あの子は たぶん その時間...を 選んだの だろう 自分の 強い 意思で 夫の こころが そのとき...に 耐えられないこと...を 知っていたから ねえ... かな... 大好きな おとうさんのこと かなが 一番 わかってるものね
遠吠え
20211105_遠吠え 2012年4月 病院...へ かなを迎えに行った ”退院”...だ 出来る限りの治療はして頂いた あとは... この子が一番安心できる この、私たちの家で 大好きなこの おうち...で どこまで 体力を 回復出来るか... それに かけてみましょう...と 毎日の 往診も お願いして... 先生 ありがとう 心強かった 家に着くと 玄関で だいが 待っていた そうだよね だい 君たちは いつだって 一緒だものね 自力で起き上がれない かなを 寝室まで 抱いて 柔らかな 毛布の上に そっと. そっ...と キュンキュンなきながら ずっと そばで 右往左往の だい しばらく...すると 少し だいが 落ち着いてきた キュンキュンとなく 声が ぴたりと 止んだ そして そのすぐ後に... だいくん おかーさんは あんな 悲しい声 きいたことなかったよ 彼は 立ち上がって 思いっきり 顔を 上に向けて 遠吠えで... 泣いた 3度...泣いた 声が あがった 太くて やさしくて もって行き場のない 悲しみに 身体をよじるようにして 絞りだした 声だった この 今ある 状況を 一番 理解し 受け止めていたのは だい...だった あの声は あの子の あの子なりの ”心の準備”の 声だった ねえ だいくん... 私たちは 心から ”家族”だよね ”退院” その夜 電話の向こうで 息子が「帰る」 「急いで 帰るよ」...と 私たちの会話が聞こえているのか かなが 少し 反応する 「にいちゃん 帰ってくるって!」 そう 声をかけると かなは 立ち上がった 少し 足は 震えていたけど 全力...で 立った そして そのまま まっすぐ 玄関まで 歩いた まっすぐ...に 前...を見て 希望...なんだね かなの 大好きな 兄ちゃん 希望とは こんなにも 力を くれるものなんだ そう...思った ねえ かな ”生きる”ってこと だね 全力で”生き抜く”ってこと だったんだね ねえ かな 今だって いつだって かなは おかーさんの中に居る 生きて...るんだよ これからも ずっと...だよ