おてもやん

化粧してたら
思い出した

”おてもやん”

ある日
2階の窓から
あの子達の様子を...
お利口にしているかな...と

朝の散歩の後は
お天気のいい時だけ
外のハウスで
午前は過ごす

おうちの中も好きだけど
外は外で
まんざらでもないらしく

通りかかる方たちに
声をかけてもらったり

ご近所さんから
おやつをもらったり...

・・・で
かなは ひっくり返って
芝生で ゴロゴロ

だいくん
相変わらず
姿勢を正して
なかなかの
”漢”な姿

・・・あら?
だいくん
ほっぺが赤い...

・・・あら?
だいくん
まゆげ あったっけ?

----あわてて外に出る
----だいの顔をみる

サインペンのようなもので
お化粧されていた

”まゆげ”と”ほっぺ”だ

しかもだ
まゆげは下向きの”残念なまゆげ”

ほっぺは...
見事な
”おてもやん”が
完成していた

これ
描いたの
誰だろ

どーせなら
キリッとした
上向きのまゆで
お願いしたかった

でさ・・・
だいくん...

いつもの真面目な顔で
だまって
描かれてたの?...

たぶん
そーだよね
...て

こんなこと
思い出した

“遊ぼうよ”

かなは
自分で
わかっていたのか。

ここで過ごせる時間が
あと
もう少ししか
ない
ということを。

体調をくずし出してから
だいに対して
ずい分と
”お姉さん”だったな。
ふと 想い返してみると
そのころから だいは
かなに
甘えるようになっていた
気がする。
全部は覚えていない。
ところどころだけだ
人間の記憶能力など
こんなものか
いや
私が単に
忘れっぽいだけなのか。

その日はいつもより
つらそうだったので
かなは おうちで お留守番
ささっと だいだけ
おしっこ うんちの為に
外に出た。
途中でかわいい柴犬の子犬に
出会った
”遊ぼう 遊ぼう”と...
何て可愛らしくて積極的なのか
まるで ここに来たころの
かなと同じだった。
不器用なだいは
”えっと” ”おおっと”と
彼女の愛らしいアタックを
かわしながら
何とか精一杯お相手をして...
だいくん、
人間だったら
どんなタイプなのかな
想像すると
 笑えてくるな

家に帰るなり
だいはかなの側に飛んでいった。
”遊ぼうよ”
いつになく積極的だった
かなは よいしょと身体を起こして
”まったく しょうがないわね”
とでも言いたげな顔で
だいの顔を
ペロペロなめていた。
だいに 育てられた かなが
いつのまにか
だいのお姉さんになっていた。

外は雪
凍りつくような寒さでも
家の中は
申し分のないくらい
暖かかったな
あのとき
あの
ほんの少しの時間。
「愛」って言葉で
表現しようか
「統合」って言葉で
表現しようか
どう
表現したら
いいのか
今の私には
まだ
わからない

だいが泣いた

だいが泣いた
アーモンドのような彼の目から
涙が流れていた
私は犬が泣くのを はじめて見た

息子が高校に入学し、寮生活を始めることとなり
車で2時間ほどの現地まで
送っていく その日、
車内にどんどん詰め込まれていく生活用品や衣類。
私たちのドタバタの動き 息子の様子などから
何となく状況が解るのか...
かなは相変わらず ”兄ちゃん 兄ちゃん”と
甘えっぱなしなのだが
だいは どことなく元気がなく
心なしか
いつも以上に 真面目な顔で...少し緊張気味である。

あっという間の2時間だった。
現地に着き
荷物を寮に運び入れ
その他、色々な手続きを済ませ なんやかんや・・・
じゃあ 私たちは そろそろ帰ろうかと。
息子は だいとかなに
「じゃあまたね。 時々は家に帰るからね」などと
声をかけたり 撫でたりしている。

実は私もかなり寂しい。
まさか、中学卒業で家から離れるとは 想定外だった
少しだけ しんみりしながら
ふ.と だいを見ると...
”だいが泣いている?”...
本当に彼は泣いていた。
車の窓から顔を出して
どこを見ているという訳でもなく
ただ...
つう~
つう~ と
涙を流していた。

”大切な 大好きな人と
これからは 離れてくらすのだ”
という事を
あの子は理解し
寂しくてたまらない心を
ちゃんと表現していたんだね。
”兄ちゃん”に向けた
 深い
  愛情を。

ベルトハイト

2000年12月4日生まれ
正式名は ”ベルトハイト”
かな は 2001年2月14日のバレンタインの日に我が家に来た。
だい の おやつを買うために たまたま立寄ったペットショップ。
中に入ると にぎやかに ワンちゃんたちの吠える声が...。
ペット業界も いわゆるブームというものがあるらしく
その頃は 小型犬で 大賑わい。
ところどころに 柴犬やビーグル 他にも...。
私は あまり犬には詳しくなかったので...。

ふと 目が行った先に すみっこのほうに置いてあるゲージがあった。
まるで”バーゲンセール”のように値段が書き換えられ
その中には 吠えもせず おとなしく じっと座っている子がいた。
”ゴールデンレトリバー” ”メス”と表示されていた。
目と目が合ったとたん その子は立ち上がって少しだけ シッポを振り出した。
”どうしよう 何か気になる”
”あぁ 目が合ってしまった”

我が家では ちょうど昨年 当時中2の息子に拝み倒されて
だい を迎え てんてこ舞いの 真最中。
おとなしめの子だが 多分 北海道犬とシェパードが入っていると
思われる 一見 迫力のある 大きめな雑種である。
成長過程で ”もろ、シェパード”を前面に押し出していた時期もあった。

しつけも まだまだ課題だらけ。
そんな中で勢いだけでもう一頭...というわけにもいかず。

”うーん”と頭の中で一人で勝手に悩んでいると
お店の方が ”だっこしてみますか?”と。
おいおい だっこなんかしたら完全にアウトだろ。
しかも 気付いたら いつの間にか 夫と息子がすぐそばに。
その目を見ると二人ともとろけそうな ♡マーク。
当然の流れのように...
だっこさせてもらった...

ハイ! ほぼ決定ですね 心はね。
だが さすがに1週間考えることにした。
自信もなかった
大型犬2頭、きちんと世話をできるだろうか... 不安もあった。

一週間後にあらためて来て その時まだここに居てくれたら
決めようか...ということで まとまった。

それが何故か その一週間 夫と息子は
考える...というより もうこの家にあの子が来ている設定か?
と思われる会話の乱発。
私といえば
”あぁ 一週間後ちゃんと待っていてくれるだろうか”...と
似たようなもので。

あっという間の一週間。
迎え入れる気 満々で 週末お店へ。
”いた!いた!” ”ちゃんと待っていてくれた!”
 夫と息子は何気に ほっぺがピンク色。
 私も胸がドキドキ。
”大変だろうな”なんて気持ちは吹っ飛んでいた。
ミスドのケースのような箱に入れられて お店の方から渡された。
そして、車の中で お利口にしていた だい の横に その箱をそっと置くと
(箱の)中で 何やらゴソゴソ。
 だい は ”え?” ”何ですか?”
そっとふたを開けると
”ジャジャーン”
 だい に向かって
”あなた だれ?”
 だいくん まったく状況がつかめず
”え?” ”なに?” ”なんですか?”
 だいくん あたふた...オロオロ...
しまいにはキューン ピーピー って...(なぜ君が泣くのだ)
だいくん...
 おかーさんは、
  そんな君が
   大好きだよ...

帰る途中の車内では
ずっと話し続ける夫と息子。
 声が上ずっている
 顔をみると
 両者共 いつも以上に血色が良い。
私も身体が暖かい
 人間はうれしいと体温が上昇するのか
・・・ということはだ。
やはり ”喜ぶ”ということは健康の秘訣だな。

家に着き中に入ると
お店では おとなしめの おしとやかな 感じ 満載だったのに
あら.まぁ 活発なこと 積極的なこと。
 床にポンっておろしたら
 全力で飛び跳ねている
 まるで 子供がスキップをしているみたいだ。
だいくん 完全に押され気味。
かな は ”あたし今日からここの家の子になったの。よろしくね!”
だいくん ”は、はい。こちらこそ...え?!”
(名前は かな。私が付けた)
元気で明るくて 可愛らしくて そんなイメージだった。
 まるで
  色とりどりの 
   ドロップのような子だった。