かなは 自分で わかっていたのか。 ここで過ごせる時間が あと もう少ししか ない ということを。 体調をくずし出してから だいに対して ずい分と ”お姉さん”だったな。 ふと 想い返してみると そのころから だいは かなに 甘えるようになっていた 気がする。 全部は覚えていない。 ところどころだけだ 人間の記憶能力など こんなものか いや 私が単に 忘れっぽいだけなのか。 その日はいつもより つらそうだったので かなは おうちで お留守番 ささっと だいだけ おしっこ うんちの為に 外に出た。 途中でかわいい柴犬の子犬に 出会った ”遊ぼう 遊ぼう”と... 何て可愛らしくて積極的なのか まるで ここに来たころの かなと同じだった。 不器用なだいは ”えっと” ”おおっと”と 彼女の愛らしいアタックを かわしながら 何とか精一杯お相手をして... だいくん、 人間だったら どんなタイプなのかな 想像すると 笑えてくるな 家に帰るなり だいはかなの側に飛んでいった。 ”遊ぼうよ” いつになく積極的だった かなは よいしょと身体を起こして ”まったく しょうがないわね” とでも言いたげな顔で だいの顔を ペロペロなめていた。 だいに 育てられた かなが いつのまにか だいのお姉さんになっていた。 外は雪 凍りつくような寒さでも 家の中は 申し分のないくらい 暖かかったな あのとき あの ほんの少しの時間。 「愛」って言葉で 表現しようか 「統合」って言葉で 表現しようか どう 表現したら いいのか 今の私には まだ わからない