20211105_遠吠え 2012年4月 病院...へ かなを迎えに行った ”退院”...だ 出来る限りの治療はして頂いた あとは... この子が一番安心できる この、私たちの家で 大好きなこの おうち...で どこまで 体力を 回復出来るか... それに かけてみましょう...と 毎日の 往診も お願いして... 先生 ありがとう 心強かった 家に着くと 玄関で だいが 待っていた そうだよね だい 君たちは いつだって 一緒だものね 自力で起き上がれない かなを 寝室まで 抱いて 柔らかな 毛布の上に そっと. そっ...と キュンキュンなきながら ずっと そばで 右往左往の だい しばらく...すると 少し だいが 落ち着いてきた キュンキュンとなく 声が ぴたりと 止んだ そして そのすぐ後に... だいくん おかーさんは あんな 悲しい声 きいたことなかったよ 彼は 立ち上がって 思いっきり 顔を 上に向けて 遠吠えで... 泣いた 3度...泣いた 声が あがった 太くて やさしくて もって行き場のない 悲しみに 身体をよじるようにして 絞りだした 声だった この 今ある 状況を 一番 理解し 受け止めていたのは だい...だった あの声は あの子の あの子なりの ”心の準備”の 声だった ねえ だいくん... 私たちは 心から ”家族”だよね ”退院” その夜 電話の向こうで 息子が「帰る」 「急いで 帰るよ」...と 私たちの会話が聞こえているのか かなが 少し 反応する 「にいちゃん 帰ってくるって!」 そう 声をかけると かなは 立ち上がった 少し 足は 震えていたけど 全力...で 立った そして そのまま まっすぐ 玄関まで 歩いた まっすぐ...に 前...を見て 希望...なんだね かなの 大好きな 兄ちゃん 希望とは こんなにも 力を くれるものなんだ そう...思った ねえ かな ”生きる”ってこと だね 全力で”生き抜く”ってこと だったんだね ねえ かな 今だって いつだって かなは おかーさんの中に居る 生きて...るんだよ これからも ずっと...だよ
原点回帰
「ワオの街だ!」 たまに 連れていってもらえる にぎやかな デパート そのデパートの屋上で めいっぱい 手を広げて よく そう 叫んでいたらしい 自分に記憶はないが そうだった らしい あれが 私の 原点...か あの街 あの土地 悲しくなるくらい ふるさと とは 思えずにいた 幼い頃の 私のこころ ”ワオの街...”に 何を みていたのか 何を感じていたのか いつか きっと ”ワオの街” 自分の中に 見てみたい ”喜び”あふれる その街を ”生きる”があふれる その街を そのとき きっと 会えるかな 喜びあふれる ”ワオの街の子” しっかり 両手を 握りあって... しっかり 心を 結びあって... ね... そんな 幸せ 想いめぐらすよ 追記 遠く遠く はなれてしまっていた 産土神社の 神様に 心からの おまいり...を そんなこと ふ...と 思った ”自分で 自分を生む” 原点... 回帰...か ・・・・ はじめて...だ
Kana
「おかあさん 私 満足 しているわ」 夢の中で 真正面に すっ...と立つ女性 大人っぽい そして とても 美しい女性 彼女が 私に 話しかけてくる 瞬時に 私は この人が”かな”であることを 理解した 直感...というものを はじめて 強く 体感した 「かな、かな なの? どうしたの?」 私は とっさに 問いかけた 彼女は 再び 繰り返す 「おかあさん 私 満足しています」 私は 少し 不安になって 「何を言っているの...どうしたの! かな!」 私の声が 大きく なってくる 彼女は 美しい口元に 手を そえたかと思うと ”吐血”した... 吐血...して そして そのまま 倒れてしまった 「かな! かな! かな!...」 悲鳴をあげて 泣きじゃくりながら 目...が覚めた ”夢だ 大丈夫だ 問題はない” 頭の中で 様々な 言葉が 通り過ぎてゆく 同時に ぬぐい切れない 不安と恐怖 こみあげてくる 涙...の中で かなの名前を叫びながら あの子をさがす手 驚いて起きてしまった夫が 「どうした? 夢か? かなは ここに 居るよ」 ああ、ほんとだ いつものように夫の横に ちゃんと 居る... 居てくれている... 安堵...と共に また 涙が溢れ出す 私の 大きな声...と 涙...に あの子たち しばらく ぴたりと 寄り添ってくれていた 泣きながら だいとかな を なでながら いつの間にか 眠ってしまった 夢の中の彼女... 美しくて まっすぐに 見つめる瞳もその声も すきとおるように きれいで ”凛”としていたな 柔らかく カールされた 長い髪が 印象的だった そして その夢をみた 半年後... その頃から あの子は 体調をくずし始めた あれ...は そういう 夢...だった 追記 私と夫にとって かなは いくつになっても おさな子 だった かわいい かわいい 三才ぐらいの イメージだった いつもつい赤ちゃん扱いをしてしまっていた あの子が 向こうに旅立ってしまったあと 久しぶりに帰郷した 息子が ふと 「俺は ずいぶん かなに 甘えてた ほんと 甘えさせてもらってたんだよね...」 「俺に とっては お姉さんだったよ」 そう言った あの 大人びた 美しい女性 凛とした姿 かなの本質を 一番わかっていたのは 遠く離れていた 息子だった そして こんな言葉を 送ってくれた 「かーさん かなのこと ずっと 世話をしてくれて ありがとう」 「可愛がってくれて ありがとうね」 まったく... 泣けて... くるよ...