花嫁

夢をみた

かなを 見送って 49日...
 ちょうど その頃 だったと 思う
  お昼寝だ...

 夢...

かなは 花嫁衣裳に 身に包み
 真っ白な 綿帽子を かぶり

“太陽の窓”...がある
  その 階段...を あがってきた
   ゆっくりと 静かに

一段一段...
 リビングのある 二階へと
  上がってきた

以前...に 一度だけ
人間の姿で 夢に あらわれてくれた
 あの かなだ
  たぶん そうだ...そう 思った

夢は ぼんやり だったので...

だけど
 深くて 濃厚な 白い色
  柔らかそうな 厚みのある 花嫁衣裳...

その 花嫁衣裳は とても 鮮明で
 私の中に
  はっきりした 映像...で
   今でも 存在して くれている

花嫁...は
 息を こらして 見つめるしかない
  私の前を 通り過ぎ

和室へと 入っていった

そして
 押入れの中へ...
  入って いった

これは 夢...か
 白昼夢 なのか

いつ 自分が 目を 覚ましたのか わからない

心臓が 高なって
 息が 速くなって
  涙が ポロポロ 出てきた

あわてて 起き上がり

あの子...の

かなの姿を追った

押入れを
 あけて

その戸...を
 あけて

頭の中では
 “会えることは ないのだ”
  そう わかっていても

あの子の 名前を 呼びながら
 その戸の 向こうにある物...を

全部 出した
 次から 次から どんどん 出した

もしかしたら あの子が
 “かくれんぼ” しているかも しれないと
  思ったから...

ねえ かな...
 おかーさん “かくれんぼ” は 苦手だな

ねえ かな...
 おかーさんは かなのこと
  みつけることが できなかったよ

あのときの かなを
 みつけることが できたのは
  みつける ことを 許されたのは

たぶん
 きっと
  だい だけだったんだろう

それだから...の
 花嫁衣裳 だったのかも しれない
  そんな風に 思ったりもする

ねえ かな...

おかーさんに
 こっそり おしえてほしい

あのとき
 あなたは
  お嫁に きたの?

誰よりも 大好きで
 誰よりも 一番に 信頼していた
 “だい”くん...だものね

もしかしたら
 だいが それを 願ったの...か
  そして かなが
   その 想い...に こたえてくれたのか...

だとしたら
 かなは おしえて くれないね
  だって それは あなたたちの
  “ヒミツ” だものね

あなたたち だけの
 大切なこと...だものね

夢...は 夢

そして 現実...は ここに在る

だけど
 ときどき
  その 境界線の “はざま”で

立ち止まって
 しまいそうに なったり

ゆらゆら
 ゆれて しまったり

あのときの
 あの夢の すぐ後だったよ

だいが
 体調を
  くずし始めたのは

やわらかな 夢からの
 ゆらぎ...と

現実に 起きてくる
 厳しさ...
  との 対峙

あれ...は

 そんな

  体感 だった

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